家族やカップルでいつも賑わう、みなとみらい。
ランドマークタワーやコンチネンタルホテルなど、洗練された街が広がる。
そこから内陸側に少し歩くだけで、全く違う雰囲気の区域に入る。
昭和の香り漂う、野毛だ。
最寄り駅は、京急線の日ノ出町。
駅の目と鼻の先にあるのが、ストリップ劇場『横浜ロック座』だ。
木彫りの看板が、威厳を感じさせる。
黒い塀には料金表示があるが、「000円なり」と肝心の千の位が抜けている。
この日は、塀の内側に客がずらりと並んでいた。出演者のひとりはテレビに出るほど有名なので、その人目当てだろう。
もうひとつ、日ノ出町駅前で目立つのが、成人映画館『光音座』だ。
横長の平屋で、一部の壁には直接『光音座』と書かれている。
また別の壁には、黄色地に赤文字の看板が掲げられている。
『光音座1』はゲイの映画、『光音座2』は成人映画と、内容が分かれている。
ここには以前、女友達と入ろうとしたものの、受付で断られたことがある。
建物や公式HPには「女性お断り」の注意はないが、不文律なのかもしれない。
『横浜ロック座』の沿道は坂道になっている。
少し登った先で細い道を曲がると、ラブホ『拾番館』がある。
住宅街に紛れ、マンションのような佇まいだ。
人と車兼用の入口に掲げた店名看板は、木目調の板にぎゅっと詰まったフォントで、高級感がある。
上の階層は、黒い壁に白い板をたくさん貼り付けたデザインになっている。
後ろから見ると、黒い壁と普通の形状の窓があるだけだ。
全体的に、カモフラージュ力が高い。
坂道を下り、『横浜ロック座』と 『光音座』を抜けて、野毛の中心街に入る。
新旧様々な飲み屋が軒を連ねる中に、ラブホが点在する。
アーケードの真横にあるのが、『フェアリーウィンク』だ。
白っぽいベージュのレンガ造りや柱のある窓が、クラシカルだ。
筆記体の店名が洒落ている。
対照的に、看板は派手な真っ赤を基調にしている。
裏から見ると、薄ピンクの屋根や「FW」のネオンがあり、異なった印象を受ける。
『フェアリーウィンク』の斜め向かいには、ラブホ『ヌーダ』。
下半分は木の板と自然な色のタイルで飾り、上半分は材質が様々な白いタイル貼りになっている。
入口付近には、百合の花を下向きにぶら下げ、間にクリスタルの飾りを挟んだ、ショーケースがある。
存在感のある建物デザインだ。
「nUDA」の文字が、蛍光色の光をきらきらさせていた。
別の通りには、ラブホ『エスター』がある。
赤茶色のレンガ貼りが、重厚なイメージだ。
縦看板は、「エスクー」とも読める。
入口には、紫色のサンシェードがある。
この建物は全部がラブホではなく、1階には串カツ屋などの飲食店が入っている。
地下にも、バーがいくつも入っている。
『エスタービル』という名前も付いている。
他の店と一緒になったラブホは珍しい。
野毛の飲み屋街を抜け、大岡川沿いの通りに出る。
カーブが味わい深い、都橋商店街に出会う。
その斜め向かいには、巨大なラブホ『ディスパリゾート』がある。
昨年までは、白とオレンジのいかにも南国の雰囲気だった。
しかし今回訪れた際は、白と黒に塗り替えられていた。
かつて噴水があった所も、
板張りになり植物が置かれている。
まるで別のホテルのようだ。
ちなみに、映画『大決戦!超ウルトラ8兄弟』では、戦闘シーンでこのホテルがちらっと登場する。
劇場で観た当時高校生だった私は、妙に嬉しくなったものだった。
大岡川沿いを黄金町方面に歩くと、ラブホ『桃幻』が見つかる。
『ディスパリゾート』に負けないくらい、大規模だ。
「Tougen」のロゴは、トロピカーナに似ていて、ジュースが飲みたくなる。
壁はメタリックな白色でまとまっている。
日ノ出町方面に戻り、野毛と伊勢佐木長者町の間のエリアに入る。
水色とピンクのホテル『ドルチェ』が、川の付近に建つ。
2色が織りなす模様は、プレゼントボックスのようだ。
入り口付近は黒とピンクで統一している。
可愛らしさでは、この一帯で1番だろう。
その斜め向かいには、『ステイ横浜』。
建物全体を、茶色の細板で覆ったデザインだ。
正面から見ると狭いが、奥行きはそれなりにある。
それら2軒からずれた所に、『ヴィクトリアコート』がある。
高さの違う棟をいくつかくっつけたような、複雑な建物だ。
白を基調に、壁はモノトーンでまとめている。
「V」の字のみ、植物模様の赤色で目立たせている。
野毛のストリップ、成人映画館、そしてラブホには、昭和の頃からの活気が感じられる。
また、川沿いのラブホもそれぞれが個性を発揮している。
疲れていても、何となく元気をもらえる街だ。
2022年2月散歩