滋賀県の彦根市は、琵琶湖に面した町だ。
国宝五城のひとつである、彦根城で知られている。
そんな彦根市には、『ロイヤルナイト』という昭和ラブホが残っている。
駅からは徒歩25分かかる。
彦根城と反対の出口から駅を出て、住宅街を歩く。
佐和山遊園跡という博物館の廃墟の脇を通り、国道8号線に出る。
トンネルの端を注意深く歩き、抜けるとすぐ『ロイヤルナイト』の看板が目に入ってきた。
(夜行く場合は、トンネルを歩くのは危ないため、駅からタクシーを使うことをお勧めする。)
剛健な西洋城のような壁面だが、実際は高床式だ。
1階は通り抜けられるようになっていて、部屋それぞれのガレージもある。
一部屋一部屋の写真を見比べる。
ピンと来た部屋の、チェックイン用ボタンを押した。
階段を上りドアを開ける。
すると、日本料理店の扉のような引き戸と対面する。
ガラガラと音を立てて引くと、横長の部屋が現れる。
正面は洗面所、向かって左に居間空間とトイレ、向かって右に浴室とベッド空間がある。
洗面所の壁には、細い木の板を並べて作った照明が掛かっている。
これだけで、日本風だなと思わせる。
居間空間は、狭く見えるが2人で座るには充分な広さだ。
畳が敷かれ、座布団とちゃぶ台が置かれている。
天井は切妻屋根のように傾斜が付いていて、金色の模様が施されている。
壁の一角には、日本画風の桜の絵がある。
奥には小さなテレビが置かれている。
テレビを観るだけではもったいない、贅沢な和の空間だ。
飛び石を歩いて、部屋の中を移動する。
浴室が東屋のように見えてくる。
浴室は、白いタイル張りに緑色の浴槽だ。
それよりも風変わりなのは、ほぼ全面ガラスで囲まれていることと、天井側に屋根が付いていることだ。
特に屋根の装飾は、木を組んだ部分が下から見えて、こだわりが感じられる。
ベッド空間に着く。
飛び石を歩いてきたため、実際よりも居間と離れている感覚を受ける。
奥の襖は、平織りの布のような模様が施されている。
日本的とも今風とも取れる、珍しい柄だ。
ベッドヘッドの壁は鏡張りで、六角形の模様が入っている。
ベッドに横たわると、格子状の天井照明や木の板が見える。
右を向くと、模様のある襖が目に入る。
左を向くと、東屋のような浴室が目に留まる。
さらに飛び石も見えて、和のモチーフが凝縮されているなあと、改めて驚く。
今回は、飛び石がくつろぐ空間と寝る空間をつなぐ、横に長い部屋を訪れた。
古い日本を感じさせる演出にも、様々なパターンがあると分かる。
国宝の城を見たついでに訪れたい、インパクトのある部屋をしつらえた城だ。
2025年7月探訪