私は、変わった内装のラブホに足を運ぶのが好きだ。
しかし20代前半の頃は違った。
ひとりで行く気が起きず、金銭的にも時間的にも余裕がなかった。
行けない代わりに、行きたいラブホのノートを作った。
このノートは、2014年時点で東京、神奈川に現存した、個性的な内装のラブホの写真を貼ったものだ。
ポータルサイトの「ハピホテ」や「ホテナビ」で変わった内装のラブホを一つ一つ調べていく。
公式サイトがある所はその客室案内も見て、壁紙がカラフルだったり変わった設備があったりする部屋を見つけ、画像をダウンロードした。
東京23区と神奈川だけに地域を絞ったとは言え、この作業だけで数ヶ月かかった。
個性的な内装の写真がある程度集まったところで、印刷する。
写真の裏に糊を丁寧に塗り、ノートと貼り合わせた。
写真を貼った後で、住所や値段などの情報を書き込む。
また、部屋ごとに受けるイメージ(コメント)を、内装写真の近くに記す。
そんな工程を経て、「行きたいラブホノート」の完成だ。
最初に取り上げるラブホは、横浜市の南部にある『愛愛賓館』だ。
青色、赤色、黄色、紫色と、カラフルな部屋が多いのが分かる。
「トロピカル!海辺のよう…」「紫が特徴的な鏡の部屋」などのコメントがある。
2軒目は、横浜市の中心部にある『ドルチェ』だ。
こちらも、部屋ごとに違う色使いが施されている。
「教室みたい!青春を思い出して…」「レースクイーンの部屋 スピード感ある?」などとコメントした。
3軒目は、蒲田の『ロッシェル』だ。
ここもまた、壁紙やオブジェに遊び心を感じられる。
「青空が広がる部屋」「ウエスタンな小屋みたい」などのコメントを書いた。
4軒目は、西日暮里の『パピオン』だ。
アメリカの車のようなベッドの部屋など、バブリーな内装が多い。
「シドニーの部屋…爽やかな風が吹きそう」「ラスベガスの部屋…うるさそう」などのコメントがある。
5軒目は、同じく西日暮里にある『エーゲ海』だ。
全室が鏡貼りの部屋となっている。
「真っ赤な鏡の部屋、情熱的」「壁も天井も鏡、さらにカーブミラーまであって、これでもかって感じ!」などとコメントした。
6軒目は、川崎にかつてあった『迎賓館』だ。
ベッドが東屋になった部屋、ベルサイユ宮殿のような部屋が、人気だった。
「和風の東屋みたいな部屋…優雅!」「ヴェルサイユの部屋…映画のワンシーンみたい!」などのコメントを書いた。
7軒目は、新宿にある『エクセレント』だ。
『エーゲ海』同様、部屋が鏡貼りとなっている。
「壁一面に鏡!」「反射してまぶしいほどの鏡がいっぱい!」などとコメントした。
作成してから約10年。
久々に読み返すと、当時とは違う感想が湧いてきた。
ひとつは、「憧れつつも行けなかったラブホに、いつの間にか行っていた」という感想だ。
ノートに載せた中では、『愛愛賓館』の公園部屋、『パピオン』のアメ車ベッドの部屋とラスベガスの部屋を、訪れた。
ノートにすることで、実際に訪れる可能性が高くなるのかもしれない。
もうひとつは、「壁紙がカラフルなだけで、こんなにはしゃいでたのか」という感想だ。
20代後半、回転ベッドや変わった形状(貝殻、馬車、舟など)のベッドがある部屋を多く訪れた。
すっかり目が肥えた今は、多少派手な壁の部屋程度では、珍しく思わなくなってしまった。
それでもノートを見ると、初心に帰ることができる。
好きなものをノートにして読む時間は、贅沢な時間だ。
作る過程は大変だが楽しく、完成後に読むと好きなものに夢中になれる。
次は自分で撮影した内装の写真などで、ノートを作れれば、と思う。