吉祥寺は、首都圏の「住みたい街ランキング」で何度も一位を記録している。
古着屋やファッション関係の店が駅前に並び、オシャレなレストランやカフェが商店街にひしめく。
都会的な一方で、井の頭公園では四季折々の自然を楽しめる。
そんな吉祥寺のラブホを巡ってみた。
まずは東改札を出て、オデヲンの角を曲がる。
ヤマダ電機の裏通りに、『ラフェスタ』がある。
入口は小さいが、建物は道に沿って大きめだ。
透明感のある薄い緑色のガラスの壁が、3ブロックに分かれている。
正面から見て右側には入口があり、大理石のような模様の柱が並ぶ。
中央では、水のオブジェが涼しげな音を立てる。銀色の鳥が向かい合い、口ばしから水を放つ。
左側には建物と同じガラス素材のピラミッドと、黒い3段の石の上に赤いラッパの先端のようなものと銀色の小さなアーチを乗せたモニュメントがある。
現代アートをこれでもかと並べたようだ。
中央線の高架をくぐり、駅の北側へ向かう。
すぐに、『ホテル ニューヨーク』の縦書き文字が見えてくる。
建物は白に近い薄ピンクを基調に、水色の梁や柱、ピンクの窓枠で彩られている。
屋根は薄い茶色で、洋風の板を敷き詰めたような柄になっている。
妖艶な店名看板とは対照的に、少女趣味な建物だ。
そこから住宅や飲食店のある道を少し歩くと、『アランド』が現れる。
真っ白で、シンプルな建物だ。
一部の部屋からは、ベランダが突き出す。
少し離れてみると、屋上に円柱の看板が立っているのが分かる。ピンクのネオンが、踊っている。
サンロード商店街を抜け、駅の北口にやってきた。
先ほど見た『ラフェスタ』の広告看板が、大きくアピールしている。
「リラクゼーション・スペース」であることが分かる。
再び中央線の高架をくぐり、吉祥寺通りを歩いて井の頭公園を目指す。
公園の入口は下り坂になっている。
坂に沿って、気になる建物がある。
『旅荘 和歌水』だ。
坂の上から、青い瓦屋根と白い壁を見ることができる。
下ってみると、木の窓板や木の柵、一階を覆う細い植物が目に入ってきた。
建物の飛び出した部分は和風、奥の部分は洋風の雰囲気を醸し出す。
奥行きがあり、坂の上の方には白い壁と「お客様入口」の看板がある。
通りに面した所にも入口があるが、こちらは裏口だろうか。
坂の下の方から見ると、木で覆われてうっそうとしていた。
白地に黒模様の丸い板に、筆文字の店名が貼られている。
料金案内は扇形だ。
看板はどれも、和風情緒が漂う。
これまで見てきたラブホとは違う、歴史を感じさせる「旅荘」だ。
公園の中から見ると、違和感なく自然と同化している。
吉祥寺には、オシャレな雰囲気を崩さず景観にとけ込んだラブホと、公園の緑になじむ昭和の「旅荘」があるのを、歩いて知った。
2022年3月散歩