初めて名古屋へ行った時のこと。
味噌カツやきしめんに舌鼓を打ったり、名古屋城や『リニア・鉄道館』に足を運んだりして、ありふれた旅に……なるはずもなく。
来る前に、愛知県在住の友達におすすめのラブホ街を教えてもらった。
来てからは、観光の合間を縫って、ラブホの集まっているエリアに足を運んだ。
巡ったのは、主に3ヶ所だ。
まずは名古屋駅の東側にあるエリア・名駅。
南北に流れる堀川に沿って、風俗店やラブホが並んでいる。
早速『妹CLUB 萌えリーン学園本校』なる店を発見した。
デフォルメキャラがたくさんいる。
その先のホテル『パラドール』は、赤いネオン管が目印だ。
アメリカのナイトクラブのようだが、バチバチ音がするのが気になった。
「快楽の扉を開放せよ!」と訴えかけるのは、メンズエステ総合ビルだ。
「本格エステと性感・回春マッサージで心も身体もリフレッシュ!」するらしい。
信号を渡った先の『サザンクロス』。
屋上には、ピンク色と青色の派手な看板が乗っている。
ピンクの建物にヤシの木や南国の鳥のイラストがあり、賑やかだ。
特に、鳥のキャラクターは何ヶ所にもいて、愛嬌を感じる。
『サザンクロス』と聞くと『北斗の拳』の荒廃した町を連想してしまうが、全く逆の雰囲気だ。
青い星が目印の『ザ・スターホテル』は、所々にカラフルなステンドグラスが使われている。
「車in」と書かれた案内が、「シャイン」とも読める。
「スター」と「シャイン」をかけているのだろうか。
ピラミッドのような形状の『ルナパーク』。
表側と裏側が階段状になっていて、上の階ほど面積が少ない。
近くで見ると、階段の角には全て刺繍のような模様が描かれている。
何を意味しているのかは分からない。とにかく凝った建物である。
そして、このエリアで独特な存在感を放つのが『コロナクラブ』だ。
通りに面した正面は、入口が狭く窓がない。
しかし奥行きは、周囲の建物と比べても圧倒的に長い。「ウナギの寝床」という表現がぴったりだ。
実はここ、全国でも珍しいゲイ専用のラブホだ。
公式HPによると、カラオケや大浴場、プールも設置されているという。
名駅に続いてやってきたのは、今池だ。
名古屋駅とは、市営地下鉄桜通線でつながる。
マンションやアパートが建ち並ぶ中に、時折ラブホが混ざっている町だ。
階段のように連なった『チュチュ今池』は、遠くからでも見つけやすい。
緑色と茶色と黒色なので、品のいい印象を受ける。
案内板を見ると、「和風モダンスタイル」「小悪魔スタイル」「アンティークスタイル」など、フロアで内装の雰囲気を分けていることが分かる。
一段ずつ階が分かれている外観同様、インテリアも階ごとに違うのだ。
その他、猫のキャラクターが特徴的な『プチホテル・ショコラ』も見つけた。
白い猫が「ショコラにきてくれてありがとうだにゃん」と言う写真や、三毛猫が「きょうは、ショコラにお客様がきてくれるかにゃあ~?」と言う写真がある。
部屋も猫の写真だらけで、ファンシーらしい。
入口の案内板は、「カップルで利用する場合」「女性が1人で利用する場合」「お父さんが1人で利用する場合」など、使い方を具体的に提案する。
「お父さん」にはウケるのか、疑問だが。
最後は、名古屋駅からJR東海道線で1駅の金山に来た。
賑やかな駅前を抜けると、静かな町になる。
緑色と白色のストライプが目印の『金山エンペラー』が見えてきた。
小さな窓には、色鮮やかで抽象的な柄の装飾がある。
大きな翼を広げた女神が街灯を持つ像が、壁に貼り付いている。
どの要素からも、昭和を感じる。
線路の真横に、『シティ・イン・カリフォルニア』がある。
老若男女が集う公園の隣には、『錦』というラブホが佇んでいる。
このエリアで最も注目すべきホテルは、線路の脇に建つ『クリスタルゲート』だ。
白色ベースで円筒形をなしていて、洗練された印象を受ける。
高層階には、半円形に突出した部分がある。
この部分は、ホテルの最高級ランクの客室だ。
部屋全体が円形になっていて、スイッチを押すと回るらしい。回転ベッドならぬ回転部屋だ。
フロントで空室かを確認したところ、先客がいた。東京にも大阪にもない回転部屋は、人気なのだろう。
次に来た時は、回りながら窓に映る絶景を楽しみたい。
名古屋には、「区画全てがラブホ」といった場所はない。
しかし、ゲイ専用店があったり、猫がコンセプトの所があったり、部屋全体が回転する客室があったり、独自の進化を遂げている。
いつか再訪したら、愛知県在住の友達とワイワイ巡れれば、と思う。
2020年8月散歩