何年か前の誕生日に思った。
プレゼントは、ラブホ探訪がいい。
それも、非常にエキセントリックな部屋に限る。
という訳でやって来たのは、西日暮里。
駅から歩いてわずか数分で、そのホテルは現れる。
受付で鍵をもらい、白いドアを開けると、こんな景色が広がっていた。
ラブホの一室とは思えない。
ピンクのアメ車が、高速道路を疾走していたのだから。
「うわああああああ!すっごおおおおい!」
目の前に広がる非日常の空間に、私は大絶叫した。
あらゆる角度から、部屋をカメラに収める。
ここはホテル『パピオン』の『フリーウェイ』という部屋だ。
奇抜なデザインの客室で有名なホテルである。
その中でも、この部屋は一番の人気を誇る。
まず目が行くのは、ピンクのスポーツカーの形をしたベッド。
ボンネットの中央には金色のエンブレムが付いている。何と読むのかは分からない。
前面のグリルガードやナンバープレートが洒落ている。
左右にヘッドライトとスモールランプがあり、どちらも光る。
今にも猛スピードで発進しそうだ。
ベッドを横から見た。
車のタイヤが半分に切れている。
それとは別に、リアルな形状のタイヤが二つ、マットレスに相当する部分に付く。
タイヤの間には小さな階段がある。
それを登った先にシーツが敷かれている。
やや高い位置で、寝ることになる。
ベッドは部屋の角にある。
角には、高速道路のイラストが貼りつけられている。
色遣いから想像するに、水彩画だろうか。
一面は遠くに田んぼや民家、山がある。
もう一面は海が広がり、船が浮かび、島が見える。
アメリカ風の車に対し、風景は日本の田舎を連想させる。
ギャップが面白い。
ベッドに横たわる。
天井は青空の模様なのが分かる。
床はアスファルト色で、白線がある。
屋外の雰囲気を出すのに一役買っている。
高速道路イラストと反対側の壁には、クラシックカーの写真が大きく貼ってある。
波打つ形状が、何とも言えない色気を醸し出す。
ガラステーブルをよく見ると、タイヤのホイールがモチーフになっている。
「BBS」とメーカー名が掘られているので、本物かもしれない。
浴室は、紅色のバスタブと白黒の市松模様の壁だ。
バスタブがレーシングカー、壁が旗に見えてくる。
F1グランプリを彷彿させる。
電話機は、遠目にはダイヤル式に見えるプッシュ式だ。
黒と茶色の間の、燻したような色合いが、重厚な印象を与える。
パピオンオリジナルのライターもある。
レーシングカーの写真も味わいがある。
天井は高速道路イラストの部分のみ、高くなっている。
ピラミッドを逆さにした照明器具も面白い。
ひとつひとつ見ていくと、いかに芸が細かいかがよく分かる。
こんなに楽しさに溢れたインテリアだとは、予想していなかった。
観察しながら、50枚以上もの写真を撮るに至った。
またいつか、入れたらいいな。
2019年9月探訪
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