歌舞伎町は魔界だ。
赤いアーケードを潜った先には、東京の他の繁華街と異なる空気が流れていると思えてならない。
青梅街道から入ってすぐの辺りは賑やかでごちゃごちゃだ。
風俗店がギラギラとネオンを光らせ、うるさいBGMを垂れ流している。
まず目に付くのは、老若男女来るTOHOシネマ。
その向かいにある立て看板には注目せざるを得ない。
『素人ストリップショー 元祖のぞき部屋マドンナ』
ネットが発達したこの時代に、のぞき部屋なんて需要があるのか。
今風のCG美少女がモデルになっていることを見ると、それなりに繁盛していそうだ。
細い道に入ると、『ソープ角海老』『ソープMAX』『にゃんパラ・新宿ガールズコレクション』と怪しい店が三件連続で並んでいる。
また別の道には、『素人女性と本気の出会い!!完全個室型出会い喫茶momocafe』とか、読むだけで疲れそうな文句の店もある。
かと思えば、
水商売専門の不動産屋さんや
24時間営業の託児所もある。
働く人側に立ったビジネスもここには存在するのだ。
歩くうちに、キャバクラやホストクラブの多い地帯になる。
その地帯から北側は、シーンと静まり返り、風俗店街とは違う緊張感を与える。
見上げるような高さの『バリアン東新宿店』を始めとする、ラブホがたくさんある地域だ。
多くのホテルは高さのみならず、敷地も広い。
鏡張りベッドルームで何十年も魅了し続ける『 エクセレント』。
その向かいでは、新築の『センス』が和テイストで粋なおもてなしをする。
昭和と平成が混じり合う光景だ。
老舗の『ラ・フランセパリス』とピカピカの『プチバリ』が、道を挟んで向かい合う。
日本人の憧れの旅行先。かつては欧米だけだったのが最近はアジアも含まれるようになった。
そんな変遷を表しているようにも見える。
ビジホ『ヴィラフォンテーヌ』の向かいにある水色のラブホ『SUN』。
ここは、80年代の伝説の裏ビデオ『洗濯屋ケンちゃん』の撮影で使われたホテルである。
VHSからDVD,ブルーレイに映像媒体が変わっても、生き残る『SUN』。
なかなかしぶとい。
縦横無尽に歩き回り、疲れを感じる。
その時、爽やかな風が怪しい街をすり抜ける。
ホテルの前の木を揺らし、黄色く染まった葉を舞い上がらせた。
魔界のような歌舞伎町でも、自然に癒されることはあるのだ。
軽くなった足取りで、西武新宿駅のある道へ抜ける私であった。
2018年12月散歩