小牧市は、愛知県の北西部に位置する市だ。
市内の田縣神社では、毎年3月15日になると、豊年祭という変わったお祭りが行われる。
豊年祭は、五穀豊穣と子孫繁栄を願う祭りだ。
注目すべきは、檜で作られた直径60センチ、長さ2メートルの男性自身を模した「大男茎形(おおおわせがた)」の神輿だ。
今回はお祭りの日が土曜日に当たったので、訪れることにした。
神社の最寄り駅は、名鉄小牧線の田県神社前だ。
名鉄名古屋から、名鉄犬山線で犬山まで乗り、小牧線に乗り換えて3駅で到着する。
所要時間は約45分だ。
駅の周辺は住宅が多く、時折喫茶店や美容院などの商店が見られる。
普段は静かなのが想像できる。
そんな町も、今日は賑やかだ。
多くの人々が改札を抜けて、神社の方にぞろぞろと歩いていく。
4割ほどが外国人だ。
駅から徒歩5分で、神社に着く。
出店が香ばしい匂いを放ち、国籍も様々な人びとが行き交っている。
境内には、祭りの最後に神輿が収まる本殿、男性自身の形をした御神体が奉られる奥宮、触ると願いが叶うという石・珍宝窟がある。
奥宮の前には、行列ができていた。
奥宮までの小路の横には、男性器と女性器の形状を呈した大きな石が飾られている。
お参りをする番が近づく。
しめ縄の奥に、男根の形の鈴がぶら下がっているのが見える。
お賽銭を入れ、二拝二拍手一拝する。
顔を上げると、緩やかに上を向いた木彫りの男性器の御神体が目に入る。
御神体を囲むように、より小さな木彫りの男性自身が並ぶ。
珍宝窟は、球体の石が2つ並んでいる。
右の石は金運や商売繁盛、左の石は恋愛運や夫婦和合に、それぞれ効くという。
神社の外にも境内にも、屋台が並んでいる。
バナナチョコ屋はどれも、男性自身をモチーフにしたものを並べている。
男根の形に焼いたカステラの店もあれば、フランクフルトを男性器の形状に切って焼く店もある。
フライドポテトの店が「モチモチ〇コポテト」なるものを売っていたため、購入した。
小さいながら、亀頭から睾丸までのシルエットが描かれている。
外はサクサクの衣、中はもちっとしたじゃがいもで、素朴な味だった。
予定では、午後2時頃に神輿一行が神社に到着するはずだった。
しかしこの日はあいにくの雨で、午後3時半に予定がずれるとアナウンスがあった。
降り続く雨と寒風の中、隣のスーパーの敷地で立って待つことにした。
約2時間後、寒さと疲労でしゃがみ込んでいると、雅楽の音が聞こえてきた。
濡れるのも構わず神輿行列へと駆けていくと、人混みの間から木彫りの男性器が見える。
いよいよ、お祭りのメインイベントが始まると実感した。
神社の境内に戻り、本堂の前で神輿行列を待つ。
雅楽が鳴り響き、行列が境内に入ってくる。
祭りののぼりには、男性器の絵が描かれている。
血管がしっかり描写されているのが面白い。
「大男茎形(おおおわせがた)」の神輿の前に、「御輦(ぎょれん)」と「御前御輿(ごぜんみこし)」がやって来る。
「御輦(ぎょれん)」は黒色と金色の神輿で、神社のご神宝が納められている。
静かに担がれて、本堂の前に降ろされた。
「御前御輿(ごぜんみこし)」は朱塗りで、神社で奉られている玉姫命(タマヒメノミコト)の夫の像が納められている。
本堂の前に来ると、ホイッスルの音がする。
「そぉれぇぇ~!」と、担ぐ男性達が声を上げて勢いよく神輿を回す。
時計回りに、また半時計回りに回転する。
納められた像が、小刻みに揺れるのが見える。
拍手していると、「大男茎形」の神輿がやって来た。
「大男茎形」の前側は、先端が丸く削られ、先端の下部分には切れ込みが付けられ、下から上に向かって斜めに凹凸が彫られている。
後側は円柱形に削られ、特に装飾はない。
前後とも、神輿の本体を大きくはみ出している。
本堂の前に来ると、誰かがホイッスルを鳴らす。
担ぎ手の男性達が、「そぉれぇぇ~!」と大声を発しながら、神輿を速いスピードで回していく。
「大男茎形」の前側がこちらを向き、横向きになり、すぐに後側がこちらを向き、また横向きになる。
観ている人々が歓声を上げ、カメラやスマホを掲げる。
一旦止まり、またホイッスルが鳴り、「そぉれぇぇ~!」という大声と共に、神輿が逆回転する。
時計回りと半時計回りを繰り返すだけでなく、「みんなに見せてあげてぇ~!」という担ぎ手のひとりの声により、「うおお~!」という掛け声と共に、高々と神輿が持ち上げられる。
観ている人々からも「おお~!」と声が上がり、シャッターの音が響く。
空からは、地元の新聞社のヘリコプターが撮影のためにホバリングする音が聞こえる。
その後も熱気溢れる中、神輿の時計回りと半時計回りが繰り返された。
最後は静かに、本堂へと納められていく。
神輿が回るのを見ていたら、寒さと疲労が吹き飛んでいた。元気をもらうことができたようだ。
田縣神社・豊年祭は、大きな木彫りの男性自身が回転する、お祭りだ。
それだけでなく、国籍を超えた魅力があり、幸せを願う背景があり、ユーモア溢れるグルメを楽しめるお祭りでもあると知ることができた。
2025年3月探訪