山手線で最も乗降客数が少ない駅、鶯谷。
駅の北口を散策してみた。
駅から歩いてわずか数分。
気がつくと、右を見ても左を見てもラブホしかない路地にいた。
迷路のように入り組んだ道を進む。
ここは、他のホテル街に比べてこじんまりとしたホテルが多い。
特に『ニッコー』は、鰻の寝床と言える小ささで驚いた。
高さは3階までしかない。
入口は一人通るのがやっとの幅に見える。
一方、見上げて首が痛くなるほど高層のホテルもある。特に線路沿いに集中している。
その一つ『サボイ』は、「コスプレレンタル100種類」を掲げる。
「浴衣レンタル1着無料」などと、期間限定サービスも衣装に関するものばかりだ。
『クリスタル』もなかなかの高層だ。
全面鏡貼りの窓で、日光を反射して眩しい。
屋上看板は、水色の手書き風の文字。
決して派手ではないのに、電車からも目につく。
『ストーリー』のフォントは、昔のドラマのタイトルにありそうだ。
ショーケースが、お洒落な雰囲気を醸し出す。
その他、壁にはサービスを示すイラストが描かれている。
イチャつく猫2匹がいた。
ほのぼのする。
『FOXY』はモノクロで、菱形を2つくっつけた看板が目印だ。
「あさねぼうサービス」は、正午まで部屋を使えるという、太っ腹なサービスらしい。
目覚まし時計のキャラが、踊っている。
この日は30度を越える猛暑日だった。
それにも関わらず、細い路地を行き交う人がたくさんいた。
車よりも、自転車で走り抜ける人が多い。
車がすれ違えないこの区域にうってつけの移動手段である。
ホテルの前に水のオブジェがあると、立ち止まる。
揺れる水面を見ると、涼しくなるからだ。
『CHARME』の水のオブジェは、じっと見入ってしまう。
穴ぼこのメタリックな円筒形の中に、何本もの透明な筒が入っている。
透明な筒は水で満たされ、ぼこぼこと無数の泡が立ち上る。
潤いのある風景をスタイリッシュに表現していた。
その他、『サンモリッツテラ』の水のオブジェには和んだ。
ゴツゴツした岩が敷き詰められ、木が周りに生い茂る。岩の間から、細い滝が一本線を描いて落ちていく。
日本庭園の一部を切り取ったようだ。
人工的なものが多い中、異彩を放っていた。
日暮里寄りの『レジェンドP-DOOR』は、所々に小さいカラフルなガラスがはめ込まれている。
立体的な渦巻き模様が施され、中心から外に向かってグラデーションがある。
ガラス工芸品のようだ。
線路から離れた通りに入る。
『Seeds』を見て首をかしげた。
ラブホの名前として、『種』はいかがなものかと思ったからだ。
隣の『New seeds』を見て、再び首をかしげた。
どう見ても『Seeds』の方が新しいホテルだったからだ。
突っ込み所満載の2軒だ。
『STELA』は、Aを流れ星のモチーフにしていて、ファンタジックだ。
ネオン看板は、三角形の鏡を背景にしているため、昼も夜も華やかな印象を受ける。
「新たなステラで このひと時を」
キャッチコピーが趣深い。
『KAHNI』(カーニ)の入口には、フクロウがいる。
銀色のボールを敷き詰めた円形の凹みに、ちょこんと乗っている。
2羽は無表情だが、歓迎しているのだろう。たぶん。
ラブホに混じって、およそ似つかわしくないものもある。
書道や文字の歴史を学べる『書道博物館』。
その向かいには、歌人正岡子規の生家を再現した『子規庵』。
ここが伝統ある下町であることを思い出させる。
鶯谷を余すところなく巡ると、水分補給をすべくカフェへかけこんだ。
2019年8月散歩
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