那珂市は、茨城県の県庁所在地・水戸市の北に隣接する市だ。
この市内には、ほぼ昭和のままのラブホ『ホテル豊』が存在する。
東京からは、常磐線で水戸まで行き、水郡線で上菅谷まで向かう。上菅谷駅からタクシーでおよそ10分乗った先に、そのホテルがある。
大きな「豊」の字が目立つ看板を見つけ、敷地を目指す。
ホテルの敷地には、戸建の建物が並んでいる。
コテージタイプだ。
一部は2階建てで、多くは平屋となっている。
空いているガレージには、部屋の写真と値段の載ったパネルがある。
全部屋をじっくり、歩いて検討した。
迷った末に、角にある和室の平屋を選んだ。
ガレージのカーテンを閉めて、部屋のドアを開ける。
玄関は、赤い模様の壁と日本画の描かれた襖で彩られている。
水回りは玄関の近くにあり、壁と同じような深紅が多く使われている。
襖を開けると、居間空間が広がる。
畳敷きの床に、四角いちゃぶ台、厚みのある座椅子が置かれている。
壁は抹茶を薄くしたような緑色で統一されている。
壁には松の日本画が描かれた、観音開きの襖がある。
開くと、障子の窓が現れる。
天井を見上げると、照明器具のある所が一段高くなっている。
木の模様が、明かりで照らされる。
空間の端には、鏡台が置かれている。
細長く、ちょっとしたスペースに無理なく収まっている。
飛び石が、居間空間とベッド空間を隔てている。
大きな石が踏み台となり、その周りには砂利や小石が敷き詰められている。
ぼんやりしていると踏み外してしまいそうな、スリルがある。
飛び石を渡った先にも、畳が敷かれている。
竹でできた引き戸により、空間を仕切ることができる。
ベッド横の襖を開ける。
上半分には先ほどと同様、障子の窓がある。
下半分は、鏡となっている。
昭和のラブホに多く見られる仕掛けだ。
ベッドヘッドは2段あり、操作盤や電話などが置かれた段と、石が敷き詰められた段からなる。
ベッドの側面は、紅色となっている。
和室に合うようにするためか、高さは控えめだ。
ベッドに横たわると、創作的な天井が目に入る。
九つに区切り木の板を張り、凹凸を出している。
板が突出した部分に、照明器具が付いている。
照明器具は「井」の字を木で組んだようなデザインだ。
目線を下に向けると、引き戸越しに居間空間が見える。
様々な装飾があるが、控えめな緑色と木の茶色でまとまっている。
それでいて、ベッド横に鏡があることから、妖艶さも感じられる。
今回のラブホは、妖艶さと和のまとまりを楽しめる、戸建形式の和室だった。
2024年8月探訪