ラブホの情報が掲載された本や雑誌は、カップル向けにどんなサービスがあるかを示したものが多い。
しかし中には、「ひとりで訪れてのんびりしたい」「レトロなラブホを訪れたいのであって、最新のサービスには興味ない」という人もいる。
そんな、ソロラブホ好きや昭和ラブホファンにぴったり合う本が『回転ベッドを追いかけて』だ。

著者のゆななさんは、平成生まれの昭和ラブホ愛好家だ。
単身で全国100軒の昭和ラブホを探訪したという、驚異の経歴を持つ。
この本は、昭和ラブホの概要、ラブホの経営者やデザイナーのインタビュー、ラブホ巡りのコツや心掛け、そして全国のおすすめラブホといった、全4章からなっている。
昭和ラブホ巡りが好き、又はこれからしたいと思っている人には、ラブホ巡りのコツや心掛けの章「昭和ラブホ巡りガイド」が必見だ。

具体的には、いいラブホの見つけ方、ひとりラブホの楽しみ方や注意点が分かる。
ひとりで訪れても断られることは実は少ない、ネット上の写真が少ないホテルの方が魅力的な傾向にあるといった、愛好家ならではの話が載っている。

まだ昭和ラブホを訪れたことがない人は、「なるほど、そんな魅力があるんだ」「これに注意するのか」と思うはずだ。
一方で私のような昭和ラブホ巡りが好きな人は、「あるある。それがラブホの魅力だよね」「そういう失敗、私もあったなぁ」と思う章だ。
全国のおすすめラブホが掲載されている章「全国昭和ラブホカタログ」は、何度も見返したくなる。
2023年3月時点で現存する昭和ラブホが紹介されている。
北は北海道名寄市の『グリーン』から、南は沖縄県那覇市の『ちひろ』まで、幅広く載っている。

写真はメインルームだけでなく、部屋の鍵や電話、エアシューターなど、詳細が想像できるものも多く掲載されている。
写真が充実しているだけでなく、ネットからは見つけられない情報があるのも、何度も読みたくなる理由だ。

例えば相模原市のホテル『ザ・ウェーブ』については、経営が家族代々で続き、何十年も働いているスタッフがいるといった、ほっこりするエピソードが分かる。
訪れたことがあるホテルのページは、「この部屋、面白かったなぁ」「そんな背景があって建てられたのか」と、自分の経験と照らし合わせて楽しめる。
訪れたことがないホテルのページには、「この部屋、見てみたい」「この設備、面白そう」といった、好奇心を掻き立てられる。
『回転ベッドを追いかけて』は、ソロラブホ好きや昭和ラブホファンには必須の一冊だ。

ひとりで純粋に凝った内装の客室を楽しんでもいいのだ、ラブホの楽しみ方は色々なんだ、と気づかせてくれる本とも言える。