奈良県の南部にある五條市には、昭和のキラキラ感を味わえるラブホが存在する。
『アイネ五條』だ。
大阪のなんばから南海高野線に乗り、橋本まで向かう。
橋本からはJR和歌山線に乗り換え、隅田(すだ)まで行く。
歩いて約25分で、ホテルに着く。
駅から徒歩で行く選択をしたが、あまりお勧めはしない。
車がビュンビュン行き交う道の端を歩かなければならず、危なっかしいからだ。
また、アップダウンが非常に激しいので、実際の所要時間以上に体力を消耗する。
タクシーを使った方がよさそうだ。
とはいえ、竹林に囲まれた急勾配の坂を登り、ホテルの建物が目に入った時は、喜びもひとしおだった。
『アイネ五條』は、ビル形式の棟とモーテル形式の棟からなる。
ビル形式の棟を選び、エレベーターで3階まで上る。
3階に着くと、薄暗い廊下が私を迎える。
廊下の部屋のパネルを見ると、残り2部屋となっていた。
利用者はそれなりにいるようだ。
廊下の照明は落とされていて、ミラーボールが一部をカラフルに照らしている。
何だかドキドキする雰囲気だ。
とりあえず部屋を選んで、ドアへと向かう。
ドアを開けると、一気に煌々とした空間が広がった。
水回りが、赤い壁で統一されている。
洗面所の鏡の上部には、台形で透明のシェードを被ったライトが取り付けられている。
浴室は、赤茶色のタイルと赤い浴槽でまとまっている。
メインルームへの扉を開ける。
水回りよりも更に鮮やかな色合いの空間だ。
手前がリビング空間、奥がベッド空間に分かれている。
リビング空間には、白いテーブルとオレンジのソファが並ぶ。
更に、カウンターと丸椅子もある。アメリカの雰囲気を醸し出す。
壁の下半分には、赤茶色のタイルが貼られている。
空間を仕切る部分には、ちょっとした台(?)がある。
台には、赤やピンクを中心とした色合いの造花が置かれている。
天井には、赤地に白文字で「PUB. ARCAPONE」と書かれた看板が付いている。
ベッド空間は、この部屋で最もキラキラしている。
ベッドの周りは、赤と黒のボーダー柄の壁に囲まれている。
ベッドヘッド側の壁には、夕暮れのニューヨークの写真が掛かっている。明かりを放つワールドトレードセンターが、時代を感じさせる。
窓側の壁には、赤いクラシックカーのイラストが描かれている。
レトロさと大胆さのあるイラストだ。
この窓を開けると、五條市の山並みが見える。
窓と反対側の壁の一部は、浴室を見られる窓になっている。
赤と黄色で「PUBLIC HOUSE AINE」と書かれている。真ん中から飛び出して来たような、勢いのあるデザインだ。
ベッドは、濃いオレンジ色と薄い緑色の2色が使われている。ベッド下のライトは七色に変化するので、見ていて飽きない。
元気な色合いのベッドに横たわる。
天井の一部が網に覆われ、中に凝った照明器具がある。網越しでも、いくつもの細かい部品からできた明かりだと分かる。
ブラックライトに切り替えると、星空のようにきらめく。
リビング空間も見渡すことができ、「PUB. ARCAPONE」の看板のお洒落さをより感じられる。
今回は、アメリカンな要素と赤色が印象に残る、きらめきのある部屋だった。
駅からの歩きにくい道も、薄暗い廊下も、この素敵な空間への「フリ」に思えた。
他にも個性的な部屋が多数ある。
関東民にとってはアクセスが悪いが、一度行けばまた訪れたくなるホテルだ。
2024年9月探訪