奈良県の東部に位置する香芝市には、昭和の頃から変わらない客室を備えたモーテルがある。
『アイネ香芝』だ。
大阪方面からは、JR大和路線で王寺まで行き、和歌山線で志都美(しずみ)へと向かう。
歩いて約20分で到着する。
ちなみに私は、和歌山線を乗り継いで、姉妹店である『アイネ五條』から『アイネ香芝』へとハシゴした。
駅からホテルまでの道は、変化に富んでいる。
飲食店やホームセンターが並ぶ、国道168号線を交差する。
宅地に入り、志都美神社という神社の横を通る。
進むと、短い竹のトンネルがある。
竹林を抜けると、ラブホが集まる丘が見えてくる。
坂を登ってすぐに、今回のラブホがある。
なお、夜になると暗い道になりそうなので、時間によってはタクシーを使うことをおすすめする。
敷地全体を回って、最も気になる部屋が空いていることが判明した。
すぐにドアを開け、施錠する。
階段を上り、部屋への扉を開ける。
右手には、水回り空間がある。
大きめの浴槽が、抽象的な柄の壁に囲まれている。
左手には、メインルームへと通じるドアがある。手前に小さめの和室、奥には何やら異様な鏡だらけの空間が見える。
手前の空間には、畳が敷かれている。
ちゃぶ台と座布団が置かれ、くつろげるようになっている。
天井には、大きな家紋が描かれている。
その周りを、何種類もの小さな家紋が囲んでいる。
壁は何となく、昔の日本家屋を感じさせる要素が集まっている。
木の柱や壁の細かな模様が、その原因といえる。
お茶セットが入った棚の上にも、家紋が描かれている。
壁の一部は、浴室を見られる窓になっている。
窓は立体的で、屏風のように蛇腹だ。
天井からは日本的な明かりがぶら下がり、竹3本が並んでいる。
さらによく見ると、床には白い砂利が敷き詰められ、灯籠が立っている。
和室と回転ベッド部屋の間には、段差がある。
異空間への入口は木で囲まれている。
天井側の木には、金色の家紋が付いている。
鏡が貼られた空間に入る。
全ての壁だけでなく、天井や床にも鏡が貼られている。
鏡と鏡の間は、長い木の板が継ぎ目の役割をなしている。
天井の真ん中には、木の細片を組んでサイコロ状にした照明器具が4つ並ぶ。
その周りを、斜めになった鏡が放射状に囲む。
その鏡と壁面が繋がって、床へと続いている。
鏡の壁の一角には、本来ベッドヘッドに置くパネルが掛かっている。
特殊なベッドゆえの工夫だ。
ベッドは円形だ。
側面は、白い抽象的な柄の布で覆われている。
側面の中央を、照明がぐるっと囲んでいる。
ベッドヘッドには、円形の鏡が4枚並ぶ。
外側には、側面と同じ柄の布が貼られている。
内側は赤いフレームで、鏡の間には擬宝珠がちょこんと乗っている。
ベッドに横たわると、天井から放射状に伸びる木の柱と、無数に同じものを映す鏡が目に入る。
側面を向くと、ベッドの形状や布地、合わせ鏡になって無限に空間が続く様子を見ることができる。
回転ベッドの枕元には、スイッチが並ぶ。
右回転のスイッチを押す。
「ギギギ……」と軋む音を立てながら、ベッドが動き出す。
しかし、90度にも満たない角度まで回ったところで、進まなくなった。
左回転のスイッチを押して、元の位置まで戻す。
360度回らなくても、回転時の感覚を味わえただけで、満足できた。
今回は、斬新な回転ベッドの部屋と昔ながらの和室がくっついた部屋を訪れた。
全体の面積はコンパクトながら、それを感じさせない大胆な造りをしている。
姉妹店の『アイネ五條』とはまた違った趣があり、どちらも再訪したくなる魅力に溢れている。
2024年9月探訪