梅雨の晴れ間の休日。
ひとりで歌舞伎町にやって来た。
今回は、とあるホテルが目当てだ。
公式サイトによると、畳の部屋や昭和の雰囲気を残す洋室があるらしい。
歌舞伎町の端にあるその看板を見つけ、入口に近寄る。
しかし、入口の案内を見て、私はがっくりと肩を落とした。
臨時休業のお知らせだ。
ショックを受けつつ、もうひとつの気になるホテルに向かう。
店名看板の横にあじさいが咲き、「連れ込み宿」という表現が似合う。
だが、入るのに躊躇した。
入口は暗く狭く、やっているかも分からなかったからだ。
何とか深呼吸して入ったものの、「昭和な感じ、素敵……!」「部屋に行くの、ワクワクするなぁ」といういつもの感情が起こらない。
むしろ「ワクワクしない、気分がよくない」「早く退散したい」という感情しか湧かない。
結局フロント前で引き返し、出てきてしまった。
1軒は臨時休業で入れず、1軒は第六感が受け付けない。
ひとりラブホの予定が狂ってしまった。
とはいえ、せっかく歌舞伎町に来たので、このまま帰るのはもったいない。
ひとり、ホテル街を歩き回る。
すれ違うのは、ほとんどがカップルだ。
歌舞伎町らしい光景を味わいつつ、ぐるぐると歩く。
「内装が面白いラブホじゃないけど、仕方ないか」と1軒のホテルに入ることを決めた。
『バリアンリゾート・アイランド店』だ。
「バリアン」は、南国の雰囲気と充実した無料サービスで有名なホテル系列だ。
今回は、3タイプあるうちで最も小さなタイプを選んだ。
白い布に囲まれたベッドと、茶系のエキゾチックな家具が目に付く。
ベッドを囲む白い布は透け感があり、淵には模様が施されている。
ベッドヘッドには、木を組んだ角柱の照明器具が立っている。
壁には、木製の大きなレリーフが飾られている。
窓際には、白い砂とサンゴ、貝殻が入ったガラスの器が置かれている。
木の欠片に、絶妙なバランスで乗っている。
さりげなく海を思わせるオブジェだ。
ベッドに横たわると、白い天蓋に目が行く。
ドレープが優雅で、日光を反射して光っているように見える。
個性的な内装ではないが、ラブホ二軒に入れないトラブルを経た私にはありがたく感じた。
このホテルには、追加料金なしのサービスが多くある。
特に、飲み物や軽食が充実している。
写真は、フルーツの香りがする水と、グラノーラ(アーモンドプードル、ココナッツパウダーかけ)だ。
ありそうでないドリンクと軽食に、舌鼓を打った。
さらに屋上には、足湯が設けられている。
2種類の香りのものと、エステフィッシュがある。
エステフィッシュでは、小さな魚達が足中の角質を食べて綺麗にしてくれる。
魚達の健気さ、足に感じるくすぐったさ、水の心地よさなど、通常の足湯とは違う体験ができる。
休憩4時間で、珍しいサービスを利用してくつろいだ。
ラブホ巡りを長年していると、様々な理由で行きたかった所に行けないトラブルに遭遇することがある。
一方で、渋々入った所が思いがけず楽しいと知ることもある。
予想外の事態もまたラブホ巡りの醍醐味、と感じた休日だった。
2025年6月探訪