世界的にも大人気の観光地・京都。
京都には、『シャルマン』という有名な昭和ラブホがある。
2021年に一時閉館したが、幸いにも営業を再開した。
ずっと気になる存在だった。
京都駅から、JR奈良線に乗る。
4駅先の桃山が、今回利用する駅だ。
駅からは、大手筋通りをひたすら歩く。
すぐに、御香宮神社が右手に見える。
付近では大きな鳥居が、道路を跨いでいる。
この日は祭りをやっていたため、周囲は混雑していた。
屋台の美味しそうな匂いが、鼻孔を刺激する。
坂を下ると、駅舎が2つある。
近鉄の桃山御陵前と、京阪の伏見桃山だ。
近鉄の電車は頭上を抜けていき、京阪の電車は地上を走っていく。
さらに、伏見桃山の目と鼻の先には、大手筋商店街が伸びる。
アーケードのある、賑やかな商店街だ。
そば屋で軽く食事をして、商店街を進んでいく。
神社に私鉄、商店街と、映画の舞台になりそうな通りだ。
商店街の端にやってきた。
アーケードがなくなっても、京の街らしいお洒落な店が並ぶ。
細い川に架かる大手橋は、古典的な明かりを灯す。
少しずつ、住宅が増えていく。
大きな川に掛かる新大手橋を渡ると、すっかり普通の郊外へと景色が変わっていた。
ホームセンターなど、大きな店舗を横目に歩いていく。
桃山駅から歩くこと、およそ30分。
左手に、白い建物のホテルが見えてきた。
今回訪れた際は、約半分の部屋が改装中だった。
外装の一部も工事が行われている。
改装工事は、営業再開時から続いているようだ。
改装工事していない部屋が並ぶ通路を、端から端まで歩き回る。
しかし、ほとんどが「在室」と表示している。
「在室」の表示がない部屋も、空室なのか改装中なのか分からない。
せっかくここまで来たのに、入れないのか。
どうしよう。汗が吹き出してくる。
私はスマホで『シャルマン』を検索して、電話をかけた。
「今敷地内にいるんですが、どの部屋が空いてますか?」
私の問いに対し、女性がはきはきと答える。
「今ですと、そうですね、236号室だけですね」
「じゃあ、そちらに入ります!」
空室があった喜びで、声が大きくなる。
私は236と表示された部屋まで走った。
『シャルマン』は、ワンルーム・ワンガレージだ。
ガレージの奥に、パネルがある。
「車以外の方はミドリ色のスイッチを押して下さい」と書かれているので、押す。
部屋に通じる階段は、ガレージの隣にある。
薄暗い中、慎重に登っていく。
白いドアを開けると、こんな空間が広がっていた。
鏡が、壁と天井を埋め尽くす。
六角形の照明や模様が目に付く。
突き当たりに、円形のベッドが置かれている。
古都を見てきた私は、一瞬で別世界に引き込まれた。
玄関の近くに、ドーム型のスペースがある。
ドームの中に、浴室などの水回りがまとめられている。
ドームと反対側の壁には、テレビと窓がある。
窓は、雪の結晶がモチーフとなっている。
ドームと壁の間には、六角形のガラスがある。
振り返って玄関のドアの上を見ると、青いネオンが「Snow」と文字を描く。
そうか、ここは雪がテーマだから、結晶や六角形があるんだ。
心の中で膝を打った。
玄関ドアを囲むようにして、鏡貼りの壁がある。
細長い鏡を並べ、曲線を描く。
部屋の奥がよく映る。
ドームで細くなったスペースに、ソファとテーブルがある。
ソファはグレーで、何となく冬を思わせる柄となっている。
テーブルは、茶系で丸い。
ソファの上部にはショーケースがある。
花瓶に刺さったプリザーブドフラワーが、ガラス越しに華を添える。
白いバラと同色系の葉っぱが、ケース空間のあらゆる方向に伸びる。
シェード付きランプが、温かい光を放つ。
玄関から最も遠くに、ベッド空間がある。
向かって右側の壁は、一面の鏡だ。
白い六角形が、規則的に並ぶ。
向かって奥の壁は、白いパネル貼りとなっている。
蛍光灯が白い光を放ち、結晶の絵をぼんやりと浮かび上がらせる。
壁とベッドをつなぐ部分に、操作パネルと電話機、ランプが置かれる。
電話機はダイヤル式だ。
クリーム色をベースに、金色が所々使われる。
向かって左側には、白系の壁がある。
もう一つのテレビと、六角形の大きな照明器具が掛かっている。
照明器具には、中央に小さな六角形の装飾がある。
このほか、食事などを受け取れるドアもこの付近にある。
ベッドのマットレスは円形で、フレームはやはり六角形だ。
フレームの側面には、ソファと同じグレーの布が貼られている。
グレーの布の中に、結晶模様が貼り付けてある。
ベッドライナーとクッションは紅色で、白やグレーの無彩色空間に彩りを足す。
ベッドに横たわる。
壁の多くが鏡貼りだったが、天井も負けていない。
中央を、六角形の照明器具が占拠する。
照明器具を囲むように、多くの鏡が敷き詰められている。
鏡の一部は、結晶模様が散りばめられ、雪の雰囲気を演出する。
鏡だらけで、もはや遠近感が分からない。
そして、徹底して雪モチーフなのが、謎めいてユーモラスだ。
今回は、鏡をふんだんに使用し、雪モチーフで部屋をまとめた、不思議な部屋だった。
古都観光のついでに立ち寄れば、ひと味違った旅になりそうだ。
2022年10月探訪
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