小民家や古い蔵が昔ながらの風情を醸し出す街、川越。
時の鐘や川越大師のエリアから南東部に約30分歩くと、ホテル街が現れる。
その中の一軒に入ると、私が一番興味を抱いていた部屋が空いていた。
こんなに嬉しいことは滅多にない。
ドアを開く。
見た途端、脳内に『スシ食いねェ!』が流れてきた。
『おさかな天国』も頭の中で鳴る。
壁一面に、あらゆるネタの握り寿司、巻き寿司、さらに軍艦寿司が詰められ、寿司桶のような丸い枠に囲まれている。
寿司を貼る面は鏡になっている。
壁の寿司たちをじっと観察する。
鉄火巻きがぎっしり詰まったものの近くに、
ウニ、イクラ、はまちなどのセットがある。
安そうなものと高そうなものを同時に見るのは珍しい。
手巻き寿司と玉子といった、子供が好きそうなネタと、ウニとイクラといった高級なネタが一緒になったセットもある。
ファミリー向けか。
イカの周りを、サバがズラッと囲んだものもある。
地味な組み合わせだが、見た目の迫力は素晴らしい。
じっくり見て、ひとつとして同じ内容の寿司桶はないことが分かった。
壁面の下のスペースにも、寿司がぎっしり詰まっている。
お茶やおしぼりもさりげなく置いてある。
光が当たって、テラテラ光る。
寿司だらけなのは壁だけではない。
入口付近の床にも、3種類の寿司セットがディスプレイされている。
やはりどれも少しずつ異なったネタが入っていて、醤油皿やお茶の入った湯飲みも添えられている。
ただ、お茶に氷を入れすぎているようにも見える。
ガラステーブルの下は、カウンター式の寿司屋で出されるような食事が再現されている。
一列に秩序立って並んだ寿司はもちろん、
おしぼりや削りかけのワサビ、
箸、そして貝の味噌汁と、どれも写実的だ。
木の板の上に置くことで、暖かさが増す。
ベッドに横たわると、こんなものが目に飛び込んできた。
寿司モチーフの照明だ。
小さな電球を、寿司がこれでもかと取り囲んでいる。
手巻き寿司は桶からはみ出していて、存在感がある。
寿司オブジェのない壁面や床面は、木目柄をふんだんに使用している。
窓際には、竹をイメージした引き戸が架かっている。
高級な寿司屋の内装を彷彿させる。
ちなみに、フードメニューには寿司はない。
近所に回転寿司があるので、食べたくなった場合に立ち寄るのをおすすめする。
寿司だらけの部屋は、小江戸の町並みよりも圧巻な眺めだった。
2021年7月探訪
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