鶯谷は、東京を代表するラブホ街だ。
駅を出る前から、ホテルがズラリと並ぶ光景が見える。
リニューアルされたホテルが増えているが、古いホテルも残っている。
『YAYAYA貮番館』はそのひとつだ。
このホテルは、新しめの洋室と昔からの和室が混在する。
和室を選び、料金を前払いした。
ドアを開けると、畳敷きの空間が広がる。
足の裏に心地よい感触を覚えつつ、部屋を歩く。
細長い造りに、居間空間とベッド空間がある。
居間空間には、ちゃぶ台を挟んで座椅子が向かい合う。
ちゃぶ台も座椅子も黒塗りだ。
座ると、ベッドが意外と高いのが分かる。
ちゃぶ台の上の照明器具は、和傘がモチーフになっている。
渋い赤系の色合いと細やかな骨組みは、いかにも昔からの日本の傘という感じがする。
居間空間の奥には、冷蔵庫やレンジが収まるスペースがある。
壁面を見ると、竹と波紋が重なる柄なのが分かる。
ベッド空間に目を向ける。
壁面は淡い水色が基調になっていて、窓には障子が掛かっている。
ベッドと障子の間では、行灯が光を放っている。
障子の下には、細長い襖がある。
開こうとしたが、動かなかった。
おそらく、ベッドが映る鏡が収まっていたのだろう。
その代わりに、反対側の壁に鏡が貼られている。
ベッドヘッド側の壁には、曲線的な装飾が施されている。
装飾により明かりが間接的になり、柔らかさが感じられる。
ベッドに掛かるブランケットを見ると、「YAYAYA」の字が延々と並んでいる。
ホテル名が寝具に入っているのは、珍しい。
ブランケットを捲ってベッドに横たわると、木の板が貼られた天井が見える。
近年なかなか見ない光景だ。
ここは東京だが、田舎の一軒家を思わせる。
横を向くと、日の光を取り込む障子が見える。
反対側を向くと、鏡にベッドが映る様子が見える。
今回は、鶯谷の『YAYAYA貮番館』を訪れた。
90年代のヒット曲みたいなホテル名からは想像できない、貴重な昭和の空間が楽しめた。
2025年7月探訪