ラブホ全室を見学できるイベント『わくわくラブホ文化ガイド』が、6月中旬に行われた。
愛知県岡崎市の、休業中のラブホ『伍萬石』の全19室を、見て回った。
3時間半、夢のような時間だった。
全室、他では見ることができない、内装ばかりだ。
解体の予定があるのが、切なくて歯がゆくて、たまらなかった。
そして9月、解体が始まる。
それと同時に、ホテル外観の写真(公表を控えるよう伝えられていた)について、公表の許可が降りた。
今回は、外観について紹介する。
見学会の日は、名鉄名古屋線の東岡崎駅から岡崎ICへと徒歩で向かった。
生活感溢れる『ダイソー』の後ろに、普段の生活では見かけない城がそびえる。
それこそが、見学会の舞台『伍萬石』だ。
壁は白く、屋根は緑色の瓦葺きだ。
天守閣の最高地点では、金のしゃちほこ2匹が向かい合う。
100円ショップの裏側へと歩くと、天守閣を近くで見ることができる。
徹底して城のデザインなのに、どこかチープでユーモラスな印象を受ける。
この天守閣の中には、特室2部屋がある。
1室は、和テイストな回転ベッドの部屋『嵯峨』だ。城のイメージと共通する。
もう1室は、きらきらでカラフルなスペースシャトルベッドの部屋『スターウォーズ』だ。外観からは想像も付かない。
『伍萬石』は、広い敷地を活用したモーテルだ。
城は横長に続いていく。
100円ショップから離れる方向へ歩いていくと、天守閣よりも低い、城の外装をなした建物が見えてきた。
底を支える石垣は、形がまちまちの立体的な石で造られている。
『伍萬石』に沿う小道を右に曲がると、出入口が現れる。
出入口には黒いコの字状の枠があり、目立つ。
黒い出入口は、とても広い。自動車の客向けに作ったからだ。
「休業中」の看板が、黒い門の奥に立ちふさがる。
出入口を素通りし、城を離れた所から見る。
装飾が少なく、いかにもモーテルの裏側らしい光景だ。
小川に沿って、城はゆるやかにカーブしている。
奥行きが予想以上にあり、驚く。
見学会では、バックヤードに立ち入ることができた。
従業員用の渡り廊下からは、横長に伸びる城を高い位置から臨んだ。
出入口側、天守閣側、いずれも緑色の瓦の存在感が大きい。
1階の石垣が四角く削られ、のれんの垂れ下がるガレージになっているのが、目に付く。
高い位置からでも、天守閣の高さが分かる。
『伍萬石』のロゴは、太い赤色の筆文字だ。
純和風で力強く、城の建物とぴったり合う。
出入口の上に立つ店名看板には、ネオン管が付く。
赤い文字は所々かすれて、茶色味を帯びている。
背景の板は青く、文字と好対照をなす。
別の場所には、点滅するランプを備えた、縦長の看板がある。
こちらの筆文字は鮮やかな赤色で、背景の青色が深い。
どちらも、電気が通った時を見てみたかった。
『伍萬石』から数分歩いた通りには、案内看板が立つ。
左が『伍萬石』だ。
赤いホテル名、緑色の「ホテル」の字、そして黒い「ガード手前←左折」の字。
いずれも、昭和の香りを放つ。
右の現代的なホテル看板が、尚そのレトロな魅力を引き立てる。
映画『リメンバー・ミー』では、「人間は二度死ぬ」ということが描かれている。
一度目の死は命が尽きた時、二度目の死は生きている人が誰も自分を思い出さなくなった時、という意味だ。
そうだとすれば、ラブホも同じように考えることができる。
『伍萬石』は、閉業し解体された(一度目の死を迎えた)。
しかし、覚えている人がいる限りは二度目の死はない。
『伍萬石』は、私達ファンの間で、これからも生き続けるだろう。
2022年6月参加・探訪
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