ラブホ全室を見学できるイベント『わくわくラブホ文化ガイド』が、6月中旬に行われた。
愛知県岡崎市の、ラブホ『伍萬石』の全19室を、見て回った。
※見学したラブホは、2021年10月より休業中で、閉業・解体の予定があるため、
詳細な場所は伏せる。
部屋のデザインの他、部屋に付いた名前も、魅力的だ。
名前の印象は、2種類ある。
ひとつは、「空間の雰囲気にぴったりの名前だ」という印象。
もうひとつは、「なぜその名前?」という印象。
お似合いだと思った部屋は、例えば『カジノ』『クリスタル』『ウインザーハウス』『クレオパトラ』 『吉原』だ。
『カジノ』は、天井にルーレットがあり、ベッドの左右にトランプの絵が貼ってある。
ルーレットは赤と黒で、華やかだ。
トランプはジャックがモチーフで、大きく光を放つ。
どう考えてもカジノがコンセプトだ。
『クリスタル』は、ベッドルームがきらきらと光る部屋だ。
よく見ると、光を反射するホログラムは、ベッドの奥の壁にのみ付いている。
天井や壁に複雑な凹凸を付け、ホログラムを様々なパターンで反射させているのだ。
多面的に光る、クリスタルガラスを思わせる。
『ウインザーハウス』は、石造りの装飾に囲まれた階段の向こうに、紅色の壁やベッドが待つ部屋だ。
天井や浴室が見える窓には、ツタが絡む。
中世ヨーロッパの城を連想させる。
ロンドンにある、ウィンザー城をイメージしたのだろう。
『クレオパトラ』は、ベッドの周りを石造りの柱で囲んだ部屋だ。
石は荒削りで、重厚な風合いだ。
ロウソク型の照明が、古い城の雰囲気を強調する。
エジプトに行ったことがなくても、名前に合う内装なのが分かる。
『吉原』は、瓦屋根と柱の装飾を潜った先にベッドがある部屋だ。
瓦屋根と柱の下にはガラスの床があり、草花が見える。
奥の襖には、渋い色合いで山脈が描かれている。
ベッドの横の壁は、赤と黒の抽象的な模様がある。
天井は、規則的に貼った障子が目立つ。
遊郭を思わせる特徴があるか不明だが、部屋に似合う名前だと言える。
一方で、疑問を投げかけたくなった部屋もある。例えば『メリーゴーランド』『シルビア』だ。
『メリーゴーランド』は、鏡に囲まれたベッドがある部屋だ。
ベッドの手前には赤茶色の木の柱とすだれがあり、アジアンな雰囲気を醸し出す。
なぜ、メリーゴーランドなのか。
木馬もなく回転する乗り物もないのに。
アジアの屋敷に来た気分になれるので、不満はない。
『シルビア』は、木を組んだ装飾が、ベッドの上を覆う。
壁は明るい黄色のタイル貼りで、空色のライトが壁を照らす。
南の島を思わせる。
なぜ、シルビアなのか。
おそらく、70年代の若者が夢中になった映画『エマニエル夫人』がヒントだ。
『エマニエル夫人』シリーズは、タイなど南の島が舞台となっている。
主人公を演じた女優は、シルビア・クリステルだ。
映画から、南の島をイメージした内装を作り、女優の名前を部屋名にしたのではないか。
部屋の名前まで凝っていて、ありきたりな内装などひとつもない。
本当に、素晴らしいホテルだった。
2022年6月参加・探訪
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