全国には、電車よりも徒歩の方が早く着く1駅間が存在する。
西日暮里と日暮里も、そのひとつだ。
この短い1駅間には、多くのラブホが建ち並ぶ。
西日暮里駅を出てすぐに見えるのは、『パピオン』である。
ここは、自動車型ベッドの部屋やピアノの部屋など、凝った内装が楽しめる。
出入口がある部分は白いタイル貼りだが、側面は水色の塗装になっている。
近くには、部屋数の多さがウリの『プレステージ』がある。
屋上に、黒地に白い文字と、「P」のロゴが付いた看板が乗る。
ラブホにしては、窓が大きい。
名前の通り、高級感が漂う。
京成本線の高架に沿って、『ピースワン』と『イーアイ』が並ぶ。
『ピースワン』は、チャコールグレーの建物だ。
カラフルな窓の飾りがアクセントになり、地味過ぎずセンスよくまとまっている。
『イーアイ』は、白い建物だ。
湾曲した階段やベランダと、壁に貼られた細長い鏡が、目を惹く。
常磐線の踏切を越えた先にあるのは、『エーゲ海』。
白いタイル貼りに水色の窓枠で、爽やかな印象を受ける。
全室鏡貼りという、今では貴重な内装らしい。
『エーゲ海』を越えると、住宅や小さな料理屋の多いエリアとなる。
一角に、ラブホが3軒集まっている。
最も建物が大きいのは、『ステーション日暮里』。
ライトベージュのレンガ貼りの壁と、緑のエンブレムが特徴だ。
窓という窓を、緑のエンブレムが印刷された幕で覆っている。
『ステーション日暮里』の斜め向かいに建つのは、『ビーガールバリ』。
白い壁に黒のフェンス、赤文字の「Bali」が、シックながらも鮮やかだ。
個人的に最も気になるのは、『たかしま』だ。
「し」の上部に丸が付き、「ま」の最初の横棒が左側で切れている。
このフォントは、趣深い。
壁はクリーム色で、窓を覆う幕は緑色だ。
このエリアのラブホは、窓に覆いを付けるのが好きなのだろうか。
さりげなく、猫2匹が壁にいる。ほのぼのする。
そこから少し歩くだけで、日暮里駅に到着する。
わずかな距離ながら、ディープな散策となった。
2021年9月散歩