ラブホが好きな人にも、あまり詳しくない人にも、勧めたい本がある。
『日本昭和ラブホテル大全』だ。
2016年時点で現存する、昭和の面影を残すラブホの外内装が約30軒載っている。
それ以外にも、新宿や鶯谷といった東京のラブホ街、「ラブホテル界のウォルト・ディズニー」と呼ばれた建築デザイナー・亜美伊新のインタビュー、筆者二人による「昭和ラブホとは何だったのか」の対談が収録されている。
トップを飾るのは、ネオンが艶やかな外装、他にはない装飾やデザインのロビーや廊下、そしてそれぞれ工夫を凝らした客室と、見所満載のラブホだ。
神殿風の寝室の部屋や舟形のベッドの部屋、鍵穴のような形の浴槽がある部屋など、毎回違う世界を楽しめる。
私は中華風の部屋を訪れたことがある。
凝りに凝った内装に圧倒された。
その一方、不思議なくつろぎ感も漂っていた。
その外観には誰もが驚く。
シンデレラ城よりも先に竣工された、360度どこから見ても「お城」のラブホだ。
円形ベッドに鏡張りの部屋や、高級料亭を思わせる部屋がある。
いつか足を踏み入れたい、ゴージャスなお城だ。
惜しくも2019年に閉店してしまった。
寝室と居間が橋で結ばれた和テイストの部屋、シャンデリアと湾曲した階段が中世フランスの宮殿を思わせる部屋がある。
「蛇口一つでも妥協しない」ほど、調度品にこだわっていたらしい。
写真を見れば見るほど、行けなかったことが悔やまれる。
『パピオン』はアメ車のベッドと高速道路のイラストの部屋が取り上げられている。
ルーレットとラスベガス写真の部屋も掲載されている。
『パピオン』の部屋は、写真で見るよりも素敵な佇まいだった。
ラブホの写真以外で、必見のコーナーである。
目もくらむようなギンギラの部屋、絵本の世界を思わせるメルヘンチックな部屋、ダイアナ妃成婚パレードで使われた馬車を模した部屋など、奇抜な内装の写真が目を惹く。
意外にも、元は幼稚園のトイレや遊具のデザイナーだったらしい。
「(幼稚園とラブホの)発想は一緒ですよ。セックスしてる時はほとんど幼児語。難しいこと言わんでしょ」
なるほど……!
この他、ラブホに関する歴史が分かる、年表ページも面白い。
回転ベッドに鏡貼りの部屋がある『シャンティ赤坂』の開業は、第一次オイルショックに陥った1973年。
上下にも動く回転ベッド(UFOベッド)の部屋がある『大宮アイネ』の開業は、成田空港が開港した1978年。
創業時の時代背景と照らし合わせると、意外性がある。
ラブホの外内装のページもそれ以外のコーナーも、語り尽くせない面白さの一冊である。
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