昭和ラブホ『シャトーすがも』へ行ってから、回転ベッドのあるホテルをよく検索するようになった。

メトロ千代田線の赤坂駅付近にある『シャンティ赤坂』も、回転ベッドをしつらえたラブホだ。

客室のドアを開けた途端、眩しさを感じた。



天井や壁の至る所に鏡が貼り付けられ、乱反射していたからだ。

こんなにキラキラした部屋は初めてかもしれない。

壁の半分くらいは鏡になっている。

それ以外は、白いクッションをいくつか貼った部分があり、ふかふかした印象を受ける。

他には、黒色と銀色の小さなタイルを敷き詰めた装飾もあり、部屋の眩しさを一層強くしている。

鏡は場所によっては拡大鏡になっている。

部屋の一角には普通の鏡と拡大鏡が貼られ、もはや拡大鏡には何が映っているのかよく分からない。

何と言っても気になるのは、奥の一段高い所にある回転ベッドだ。

黒いフレームに囲まれ、白い円形の掛け布団が敷いてあり、

枕元には透明感のある素材で作られた操作盤がある。

回転するボタンを押してみた。
ポチッ
ウイ~ン、カタタタタタタ……

小さな機械音を立てながら、ベッドが回り出す。

滑らかな動きで、見える景色を変えてゆく。

早くはないが、ゆったりもしていない。

『シャトーすがも』の回転ベッドは、音が重厚でぎこちなくゆっくりした動きだったが、こちらは静かでスムーズに回る。

同じ回転ベッドでも、こうも違うのかと驚いた。

回りながら天井を眺めると、寝ころぶ私が見える。

拡大鏡のある壁を見ると、歪んで『ムンクの叫び』みたいになった顔が映る。

部屋の突き当たりにあるシェード付きランプは、鏡により4体あるように見える。

鏡に囲まれて回転するだけで、別世界が生まれていた。

浴室とベッドルームを仕切るのは、大きなガラスの窓だ。

花が水の流れに浮かぶ柄が施され、丸見えにならずアートな雰囲気に仕上げている。

回転ベッドは、昭和ラブホの王道アイテムである。

それなのに、洗練されていて少しも古臭さを感じさせない。

『シャンティ赤坂』は、半世紀前の妖艶さも今時の高級感も楽しめる、欲張りなホテルだった。

2020年6月探訪
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