まだ梅雨に入らない6月上旬。
私は朝も早くから、池袋に向かった。
お目当ては、『ロータス池袋』という、できて日が浅いラブホだ。
https://ikebukuro-lotus.com/room/
貝殻ベッドの部屋、キンキラキンの殿様の部屋、赤い花が鮮やかな花魁の部屋など、こだわりの客室がたくさんある。
わくわくしながら、池袋の北西口の階段を登り、淫靡な街を抜け、ホテルのドアを潜る。
だが、私の想いはあっという間に砕け散った。
満室だったのである。
休憩の開始時間は6時で、来た時間は7時台。
わずか1時間で、客室が埋まってしまったようだ。
(全くもう、朝も早くから皆何してんのかね)
心で毒づいて、ホテルを後にした。
ファミレスでモーニングを食べ、2時間ほど経過してから再度訪ねたが、やはり同じだった。
さて、これからどうしよう。
悩んでいると、こんな考えがひらめいた。
「山手線沿いには他にもお気に入りのラブホがある。
天気もいいし、歩いて巡ってみよう」
線路の下の地下道を潜り、東口へ向かった。
サンシャイン通りを突っ切って、東池袋公園を横切り、住宅街に入る。
線路を見下ろす細い路地を歩く。
池袋が近いエリアとは思えないほど、静かだ。
すぐに大塚へと到着した。
都電の踏切や駅前の繁華街を横切ると、上り坂がきつい住宅街が現れた。
山手線の線路と少しの間離れ、再び線路を見下ろす道を見つける。
巣鴨駅の手前には、『シャトーすがも』がある。
回転ベッドに鏡貼りの部屋が目玉だ。
だが、駐車スペースには立ち入りを拒むロープがかかっていた。
不安な思いで入口を覗くと、張り紙が目に付く。
休業のお知らせだ。
もう3ヶ月もこんな状態らしい。
あの回転ベッドのスイッチを入れることや、他の昭和レトロな部屋に入ることはもうできないのか。
不安な思いで、しばし趣深いネオンを見つめた。
駒込方面へ歩く。
パワーワード「花びら回転」がひしめく通りがあると思えば、閑静な住宅街に入った。
大きめな家や女子校の校舎が並ぶ、お上品なエリアだ。
駒込を過ぎ、田端方面へ。
山手線唯一の踏切をカメラに収める。
高台から、車両センターを見下ろす。
田端駅を過ぎると、古いビルや住宅が多い地区になった。
西日暮里はすぐそこだ。
疲れた足もなんのその、『パピオン』へとまっしぐらに向かう。
アメ車ベッドの部屋、グランドピアノの部屋などで有名だ。
午後2時はそんなに混んでいない、と予想して。
しかし、その考えは甘かった。
満室ではなかったものの、以前訪れたことがある部屋しか空いていなかったのだ。
すごすごと、西日暮里駅へと引き返した。
推しのラブホを徒歩で巡ったのに、全てフラれるという憂き目に合う一日だった。
それでも帰りの電車では、不思議な満足感に包まれていた。
一日でこんなに多くのラブホを見ることは、とても珍しいからだ。
同時に、次はもっと早起きして、お目当ての部屋を狙ってやろう、と心に決めるのだった。
2021年6月巡る
↓回転ベッドで有名だった、『シャトーすがも』についてはこちら
↓アメ車ベッドの部屋などがある『パピオン』についてはこちら